君に届ける物語
翌日、君は前みたいに郵便受けの前にいた。

僕を見つけると、こんにちはと笑ってくれた。


『待っていた手紙は、初めから届く予定なんてなかったんです』


君は苦笑しながらそう告げた。


『1年間って決めていたの。1年、待とうって』


その1年が過ぎたから、君は待つのをやめたのだろう。


『別れた彼氏からの連絡を待つなんて、未練がましいですね』


電話やメールですぐに連絡が取れてしまうこの時代に、

それでも1年待ち続けた君の思いは、

簡単笑って流せてしまうほど、軽いものではないだろう。

僕はその1年の長さを思って切なくなった。
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