不器用男子の、恋。
*
そわそわ。
付き合い始めてから1週間目の今日、待ち合わせ時間になっても彼女が現れない。
そわそわ。
俺は心配で仕方なくて、キョロキョロと周りを見渡していた。
どうしたんだ?事故とか遭ってねぇよな?
不安がよぎった瞬間、愛しの彼女の姿が見えて、俺はその名前を呼んだ。
「トロっ」
「あっ、西崎くん!遅れちゃってごめんねっ?」
全然大丈夫だし!
良かった!無事で!
ホッとした。
「はぁ。ほんとトロいよな」
トロだけに!そこがかわいいんだけど!
“トロ”っていうのは付き合い始めた次の日に、俺がつけた愛称。
急に名前を呼び捨てにするのも微妙だし、長く付き合うんだからゆっくり展開していけばいい。
まずは愛称で呼んで、仲を深めよう作戦だ!
「ごめんねっ?」
にこっとかわいい笑顔を浮かべて、トロは俺の顔を窺うように覗き込んでくる。
……うっ!
これはトロの癖らしく、そのたびに俺の心臓はドキッと飛び跳ねるんだ。