ヒーローの缶詰
俺たちの止めに入る春日野に、
「自分が好きならそれで良いじゃない。晃も悠二も、お互いの批判はやめなよ!」
と、なだめられ、ひとまず座って睨み合う。
…あ、でもなんか小学生の喧嘩みたいだな、やめよ。
「でもさぁ…。」
春日野が小さく呟いた。
「どうして、"自分もなれる"って、本気で信じてたんだろうね。
変身して、悪と戦うヒーローなんて、現実にありえないのに…。」
その言葉が、強く、皮肉っぽく胸に響いたのは、気のせいじゃない。
いつだったか、ヒーローなんてなれないって知ったのは。
それから、現実の職業を夢にした。確か医者になりたかったっけ。
でも今度は頭が足りないと気づいて、
また、諦めて、とりあえず大学に入って、
そして、働く場所を探している。
まだヒーローがいた頃、あの頃なりたかったものに、
俺はどれくらい近づいたんだろう。