ヒーローの缶詰
「さ、俺、今から実習の報告書を出しに行くから。」
「あ、私も。」
そう言って席を立つ晃と、春日野。
二人は、文学部から教員採用試験を受ける。
一方、もとより専門職の道も狭いこの文学部から、とりあえず就職先を決めようと、特にやる気のない俺。
「悠二、おまえもバカなことばっかり考えてないで、ちゃんと就活のこと考えろよ。」
口調はきついんだが、これは心配からくる晃の台詞。
二人が去った後、俺はテーブルに頭を押し付けて、目を閉じた。
脳裏に浮かんだのは、あの傷だらけの、ヒーローの広い背中。
―やりたい仕事がわからない…―
現実の中で、希望すらもたない今の俺を、子どもの頃の俺が見たら、
…きっと、"こんなの俺じゃない"って怒る。
子どもの頃の俺、おまえはどんな風になりたかった?
「…俺も、ヒーローになりてぇ…。」
口に出してみて、そして恥ずかしくなって、嘲った。