ヒーローの缶詰
1:心のヒーローは廃れない
「らいだぁぁあー、きいっっく!!」
陽の落ちかけた寒空の下、通りすがりに聞こえた懐かしい台詞、子どもの声。
俺の胸に蘇ったのは、十数年前、小学生だった俺が、
暗くなるまで、夢中になって友達とやったヒーローごっこの姿。
声の主達が、小さな体をめいいっぱいに使って、どれほどに派手な技をくり広げているかと、
期待を込めて振り向いた。
「違うよ!ライダーキックはこうだよ!」
そう言って、その子がやって見せたのは、
なんか素早い回しげり。
「はぁ?」
思わず変な声でちゃったじゃないですか、コノヤロウ。