私の家のお隣さん。
「読んだよ、ファンレター。どちらかというとラブレターだったけど」
…恋人つなぎのこの手には彼はなんとも思わないのだろうか。
とても、むずがゆい。
「あああの、こないだはごめんなさい。私がデリカシーがないばっかりに…」
謝りながらも震える唇と、どんどん小さくなってしまう声。
「俺の方こそごめん。締め切り前でピリピリしてたんだ。でも、大丈夫、君の想いは伝わったよ」
そんなわたしに向けられる優しい声に、思わず彼を見つめる。
「あ、ここだよ」
彼がふいに立ち止まる。
「ここで、君と出会ったんだ。」
そこはいつも通る帰り道にある小さい公園だった。
何を言っているかわからなくて、不思議そうな顔をしていると、彼がまた言った。
「ここで、雨の中、君が猫を拾っているところをみたんだ。」
ああ、そうだ。この公園は今は実家にいる猫を拾った場所だ。
「その時の君の表情がね、スゴく優しげで、一目惚れだったよ」
思いもよらない言葉に、一拍置いて反応した。
「…え、と…?」
「あはは、困った顔も可愛いね」
その言葉に、ポン、と音がするくらいすぐ赤くなる顔。
「君が…言葉で伝えてくれたから、俺も、言葉にして伝えようかな。」
彼はそう言って私に向き直った。