キミの誘惑



ある日の昼休み―――


「そっかあ、後輩くんミオのバイト姿見たことないんだ」

「部活忙しいですもん。中村先輩はあるんですか?」

「うん、一回だけ。ミオったら緊張のあまりお皿割ってんの!あれはおもしろかった」

「ちょっと!人の失敗を笑わないでよ」


去年、私がバイトを始めてだいぶ経った頃、ユメがいきなり私のバイト先に来た

驚きと緊張のあまり、お皿を割ったりうまく接客できなかった

知り合いがお客としてくるとどうも緊張して……

なのにユメはそんな私を笑うし、まったくもう。全然笑い事じゃない


「俺も行きたいです、バイト先!」

「絶対ダメ」

来たら何が起こるかわからない、ましてや後輩の前で失敗なんかしたくないし

「ええ!?お願いします先輩!」

頭をさげる勢いでお願いする遼くん

「ほらほら、こんな可愛い後輩が頼んでるんだから先輩らしさ見せないとね」

「っ―――」

ユメの一言で目をうるうるさせる遼くん

そんな小動物みたいな目で私を見ないでほしい

「それとも失敗するの怖いのー?」

さらに追い打ちをかけるユメ。そのニヤニヤは怖いからやめてほしい……

「売り上げにもちゃーんと貢献するからさ!」

それに、ユメ本人もすごく以下たそうに見えるのは気のせいかな……




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