へたれ王子
「…いや、ありえないでしょ。
それは、菊池君の考えすぎだって」
俺がそう言っても、菊池君の表情は変わらない。
「友希、素直に認めなよ」
って、俺の肩をぽんぽんと軽くたたくだけ。
…でも、菊池君の言う通りなのかな。
確かに俺は、最近茉友ちゃんのことがやたら心配だし、
可愛いって思うし、
すげードキドキする。
(まぁ今日のデートは嫌な思いさせちゃったけど)
…あ、気付いたらなんか恥ずかしくなってきた!
「き、菊池君!」
「うん?」
「俺、
茉友ちゃんのこと、
すすすす、す好きだわ!」
俺がそう言うと、菊池君はどこか表情を曇らせた気がしたけど、
やがていつもの笑顔で
「そっか」
って、相槌を打った。
「話聴いてくれてありがとう!じゃあ俺、帰るね!」
「え、もう?」
「だってお腹空いたし。またね、」
俺は菊池君にそう言って、すぐにその場を後にする。
…その直後、菊池君が独り呟いた言葉なんて知らずに。
「マジかよ…友希、」