へたれ王子
…きくちせんぱい…?
ある女子の声が聞こえて、なんとなく振り向くと、そこには数人の女子達に囲まれている菊池先輩の姿があった。
…あ、菊池先輩もモテるのか。
って、そりゃそうだよね。菊池先輩顔カワイイし(失礼?)。
もちろん星河先輩と比べるとその女子の数は全然少ないけど、菊池先輩も笑顔で応えてあげている。
…今日こそ、お母さんに携帯をおねだりしてみよう。
なんて、あたしが切実にそう思っていると…
「…!」
なんとなく菊池先輩をぼーっと眺めていたら、ふいに視線がバチッと合ってしまった。
まさか菊池先輩がこっちを見るなんて思わなかったあたしは、慌てて視線を逸らしてその場を後にしようとするけど…
「…ごめん、みんな。俺先約あるんだった」
「え~、菊池せんぱーい、」
突如背後からそんな言葉が聞こえて、そうかと思えば次の瞬間…
「茉友ちゃん!」
「!」
何故か菊池先輩が、あたしの傍まで走って来た。
「え、菊池先輩!?どうしっ…」
さっきのコ達は!?
あたしがちょっとびっくりしていると、菊池先輩はニッコリ笑って言う。
「茉友ちゃん独りだったから。独りより、二人のほうが寂しくないでしょ?」
そう言って、あたしを見る。
菊池先輩…やっぱ優しいなぁ、