へたれ王子
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そして完全に解散になって、教室に戻っていく菊池君を、俺は後ろから呼び止めた。
「菊池君!」
「…友希」
俺がそう呼ぶと、菊池君はすぐに立ち止まって振り向いてくれる。
そして俺は菊池君の腕を掴むと、言った。
「ちょっと話があるんだけど」
「え、なに!?」
菊池君はそう言うけど、俺は黙って菊池君を誰もいない校舎の陰に案内する。
…そんな俺の片手には、さっき自販機で買っておいたジュース。
俺はそこに到着するなり、それを菊池君に渡すフリをして言った。
「菊池君。これあげる。飲んで」
「え、あ、ありがとう…?」
だけどそのジュースを菊池君が受け取る前に、すぐにそれを遠ざける。
「なに…」
そんな俺に菊池君は顔をしかめてそう言うけど、俺は菊池君にはっきり言った。
「あげるけど、その代わり俺の言うこと聞いて」
「?」
「もう二度と、茉友ちゃんに近づかないでほしい」
俺がそう言うと、菊池君はちょっとびっくりした顔をして俺を見た。