へたれ王子




******



そして完全に解散になって、教室に戻っていく菊池君を、俺は後ろから呼び止めた。



「菊池君!」

「…友希」



俺がそう呼ぶと、菊池君はすぐに立ち止まって振り向いてくれる。

そして俺は菊池君の腕を掴むと、言った。



「ちょっと話があるんだけど」

「え、なに!?」



菊池君はそう言うけど、俺は黙って菊池君を誰もいない校舎の陰に案内する。

…そんな俺の片手には、さっき自販機で買っておいたジュース。

俺はそこに到着するなり、それを菊池君に渡すフリをして言った。



「菊池君。これあげる。飲んで」

「え、あ、ありがとう…?」



だけどそのジュースを菊池君が受け取る前に、すぐにそれを遠ざける。



「なに…」



そんな俺に菊池君は顔をしかめてそう言うけど、俺は菊池君にはっきり言った。



「あげるけど、その代わり俺の言うこと聞いて」

「?」




「もう二度と、茉友ちゃんに近づかないでほしい」





俺がそう言うと、菊池君はちょっとびっくりした顔をして俺を見た。

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