へたれ王子

だけど俺は、その視線から逃げるように田中先生に顔を背ける。

背けたはずなのに、何故か田中先生は俺の隣に腰を下ろして…



「悩みがあるなら、聞いたげよっか？」



そう言って、ニッコリ微笑んだ。



「…べつにいいですよ、そんなの」



俺がそう言うと、田中先生は少しだけ黙り込んでしまう。

そしてしばらく何かを考えた後、静かに呟くように言った。




「…ごめんね、星河くん」

「…え？」



その言葉に田中先生の方を見ると、田中先生は前を見据えたまま話を続ける。



「怒ってるよね？この前のこと」

「…」




“2年生の夏野さんと付き合ってるんだって？”

“ぶっちゃけ、やめといた方がいいんじゃない？”

“釣り合ってないよ？”



“…ほっといてください”




…あれか。今思い出してもムカつく言葉だ。



「怒ってないわけがないじゃないですか」



俺がそう言ったら、田中先生は「だよね」って苦笑いを浮かべた。

そして、思わずため息を吐きそうになる俺に「でもさ」って話し始める。



「あたしも、本当に心からそう思ってたわけじゃないんだ、」

「え…？」



田中先生のその言葉に、俺はまた先生を見た。