へたれ王子
…って、ちょっと待てよ。
だったら…
「…わかったよ。ごめんね。じゃあ先生、職員室戻るから」
「…」
「星河くんも、気を付けて帰りなよ」
「…はい、」
田中先生はそう言うと、生徒玄関のすぐ傍にある階段を上って行った。
「…、」
確かに…茉友ちゃんは、勇気をだして俺に告白してくれた。
本当に怖かったのはきっと事実だ。
だって、俺のことが好きなんだから。
だったら俺は…俺は何で、
「星河先輩!」
俺が独りそう考えていると、その時ふいにそう名前を呼ばれた。
誰か、なんて見なくてもわかる。
「…茉友ちゃん」
俺を呼んだのは、茉友ちゃんだった。