へたれ王子
一瞬、何が起こったのかわからなかった。
だけど「星河先輩に抱きしめられている」ってわかった瞬間…
「せ、先輩…?」
赤くなる頬を感じながら、あたしはそう呟く。
すると星河先輩はすぐに我に返って…
「!!あ、ごっ…ごめん!!!」
って、顔を真っ赤にしてあたしから離れた。
…あ、ちょっと残念かも。
「あ、あの…星河先輩?」
あたしがそう言うと、星河先輩はあたしから顔を背けてしまう。
あのままもうちょっと、抱きしめられていたかったな…。
あたしがそう思っていると、星河先輩がやがてまたあたしの方を見て言った。
「あの、この前のデートさ」
「?」
「あれ、急にいなくなってごめん」
「!」
「…ほんとは、茉友ちゃんが菊池君と一緒にいたって聞いて嫌だったからなんだけど…」
星河先輩はそこまで言うと、恥ずかしそうに頭を掻いてまた話を続けた。
「…もう、二人を疑うの、やめる」
「え、」
「だって俺も、茉友ちゃんのことがその…すー、すー…す…」
「?」
「す、すー、」
「…何ですか?」
なんだかもどかしくなって思わずあたしがそう聞くと、星河先輩は決心したようにはっきり言った。
「すすす、好きだからさ」
「!!」