へたれ王子



菊池先輩 side



“わかりました。”



茉友ちゃんからのそんなメールを見つめながら俺が思わずニヤけていると、

それを向かいの席でたまたま見ていた同じクラスの女子が言った。



「ちょっとキモイ、だいすけ」

「!」



突然そんな言葉が降ってくるから、俺はびっくりして携帯を閉じてそいつを見遣る。



「…ほっとけ」



そしてそれだけを言うけど、その女子は言葉を続けて俺に問いかけてきた。



「ね、もしかして彼女?」

「…」



彼女、だといいけどねー。

人生、そんなうまくいかないっぽいよねぇー。




「…まさか。友達だよ」




俺がそう言って机の上にうなだれると、それを遮るようにまた問いかけられる。




「え、じゃあなんでさっきあんなニヤけてたの?」



だから、いいじゃんそんなことは。

「好き」って、言わせんなよ。

俺だって恥ずかしいんだから。




「…そういうふうに見えただけだよ」



俺がそう言うと、そいつは疑うような目で俺を見てきた。



< 146 / 323 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop