へたれ王子
菊池先輩 side
“わかりました。”
茉友ちゃんからのそんなメールを見つめながら俺が思わずニヤけていると、
それを向かいの席でたまたま見ていた同じクラスの女子が言った。
「ちょっとキモイ、だいすけ」
「!」
突然そんな言葉が降ってくるから、俺はびっくりして携帯を閉じてそいつを見遣る。
「…ほっとけ」
そしてそれだけを言うけど、その女子は言葉を続けて俺に問いかけてきた。
「ね、もしかして彼女?」
「…」
彼女、だといいけどねー。
人生、そんなうまくいかないっぽいよねぇー。
「…まさか。友達だよ」
俺がそう言って机の上にうなだれると、それを遮るようにまた問いかけられる。
「え、じゃあなんでさっきあんなニヤけてたの?」
だから、いいじゃんそんなことは。
「好き」って、言わせんなよ。
俺だって恥ずかしいんだから。
「…そういうふうに見えただけだよ」
俺がそう言うと、そいつは疑うような目で俺を見てきた。