へたれ王子



そう言って、身体をあたしに向けて今度はじっと見てくる菊池先輩。

そんな菊池先輩に、あたしは「星河先輩に喜んでほしいから」とその言葉に頷いた。



「はい。じゃあ、行きます」

「!」

「…あたし、全然わからないんで。よろしくお願いしますね」



あたしがそう言うと、菊池先輩はニッコリと笑顔を浮かべて、



「じゃあ、明日の放課後ね。茉友ちゃんの教室まで迎えに行くから」



そう言って、ぽんぽんとあたしの頭を軽く撫でて屋上を後にした。



「…」



…迎えに行く、だって。

星河先輩は「迎えに来て」だったのに。


やっぱり菊池先輩って優しいな。



あたしは独りそう思うと、菊池先輩に続いて屋上を出て行った。





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