へたれ王子



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そして、翌日の放課後。



あたしが教室にいると、菊池先輩は本当に迎えに来てくれた。



「茉友ちゃん、」

「!」



菊池先輩はあたしを呼ぶと、笑顔であたしに向かって手招きをする。

今日は星河先輩と帰れないことは前もってメールしておいたから、

きっと心配することはない。(ただ、返事はたった“うん”だけだったけど)


っていうか…なんか、迎えに来てくれるのってほんと感動するな…。


菊池先輩の隣で階段を下りながらそう思っていると、

ふと菊池先輩が口を開いて言った。



「茉友ちゃん、門限とかある?」

「いえ。親に連絡すれば基本的に何時でも大丈夫です、」



…なんて、普通の会話をしているのに、その時周りの生徒の囁きが聞こえた。




“あれ?あのコ、星河先輩と付き合ってるんじゃなかった?”

“浮気してるんじゃないの!?”

“はぁ!?何それ!”




「…っ、」



…浮気なんかじゃないのに。


そう思って思わず俯くあたしに、菊池先輩がふいにあたしの方を見て、

周りに聞こえないような小さな声で言う。



「大丈夫だから、心配しないで」



そう言って、優しく笑った。






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