へたれ王子
菊池先輩の後ろでそんなことを思っていたら、
ふいに菊池先輩が立ち止まり、あたしの方を振り向いて言った。
「…ごめんね、茉友ちゃん」
「!」
「まさか香菜が、あんなこと言うとは思わなくて…」
そう言って少し俯く菊池先輩に、あたしは首を横に振って言う。
「い、いえいえ!別にあたしはあまり気にしてませんよ!
ってか、星河先輩の彼女だったらそういうこと言われるんだろうなぁーって、
多少のことは覚悟してましたし、」
「…」
「っていうか、あたしの方こそ、ありがとうございます。
なんだかかばってもらっちゃったみたいで…」
あたしはそう言うと、菊池先輩に向かって軽く頭を下げた。
するとその時、ふんわりとあたしの頭の上に菊池先輩の手が乗っかって、
菊池先輩はその状態のままあたしに言う。
「…茉友ちゃんは、ちゃんと可愛いよ」
「え、」
「きっと、俺が一番そう思ってるから」
菊池先輩はそれだけ言うと、その手を退かした。
「…?」
…今の言葉、いったいどういう意味だろ…?
聞き間違いなのかな?
あたしが一番可愛いって…。
…いやまさか。何かの勘違いでしょ。
あたしは自分にそう言い聞かせると、妙にドキドキしている心を抑えて言った。
「…で、ではあたし、そろそろ帰りますね」