へたれ王子



…………



「茉友ちゃん」

「…」

「ね、茉友ちゃんってば。ほんと、俺が悪かったよ」




あれから、ようやく歌い終わった直後。

恐る恐る星河先輩を見ると、

星河先輩は若干笑いをこらえているように見えた。

そんな星河先輩にあたしが背を向けて拗ねていると、

星河先輩が「ごめんね」って謝ってきたのだ。




「でも、歌が苦手ならそう言えばいいのに。
そしたら、カラオケじゃない他の場所も選らんでたよ」

「…だ、だって」

「?」

「星河先輩が、カラオケに行きたいんならいいかなぁと思って」




あたしがそう言うと、ふいに星河先輩の声が聞こえなくなる。

…もしかして、引いちゃった?

そう思って「…すいません」って背中越しに謝ると、

背後で星河先輩が言った。




「ほんと、ごめん。っつか、機嫌直った?」



その言葉に、あたしは



「はい。…ちょっとだけ」



なんて、あまり可愛くない返事をしてしまう。

だけど星河先輩はそんなあたしに機嫌を損ねることなく、



「じゃあこっち向いてよ」



って言った。






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