へたれ王子
これ…キスされる!!?
そう思うとドキドキして、今にも破裂しそうな心臓を心で必死に抑える。
だけどそれはおさまってくれなくて、逆により速くなった。
…星河先輩との距離が近づいてきた。
「…っ、」
でも…星河先輩は凄くゆっくりで、なかなかキスに到達しない。
こんなんじゃ、心臓が壊れちゃうよ…。
そして、キスをしたことがないあたしは、
その緊張感と突然のことによる驚きで、それを咄嗟に笑ってごまかした。
「は、ははっ…」
「…?」
「ほ、星河先輩、何の冗談ですか」
「え、」
「次、星河先輩が歌う番ですよ」
そう言って、キスを避けるように星河先輩から離れる。
…だけど、星河先輩はその場から動こうとしない。
「…先輩?」
不安になってそう声をかけたら、
星河先輩が沈んだ声で言った。
「…ごめん、茉友ちゃん」
「!」
「ごめんね」