へたれ王子
星河先輩はそれだけ言うと、部屋を後にする。
そんな星河先輩をあたしは慌てて追いかけようとしたけど、
あまりに突然のことすぎて、追いかけられなかった。
「星河先輩っ…」
嘘でしょ?
冗談だよって言って戻ってきてよ。
だけど部屋には、寂しく残されたあたしが独りだけ残る。
隣の部屋から聞こえてくる明るい音楽が、耳をつんざいた。
なんで?
あたしがキスを拒んだから?
もしかして、星河先輩を傷つけたの?
そう思うと不安になって、すぐに星河先輩に電話をかけてみる。
だけど…
“留守番電話サービスセンターに、接続します”
「…っ、」
聞こえてくるのは、そんな機械音だけ。
…こんな時、どうしたらいいの…。
追いかけてみようかな。
まだ、間に合う?
でも…。
結局今のあたしにはそんな勇気がなくて、
そのあともただ独りだけの部屋で、落ち込むことしかできなかった…。