へたれ王子
そう言って、どこか切なくあたしを見つめる菊池先輩。
その視線にもドキドキしちゃう。
ってか、どうしよう…どこを見たらいいのか全然わからない。
今日、高井さんと佐伯さんから言われた、
「菊池先輩の“ターゲット”の噂」のことも聞きたいのに。
…手が震える。
そう思って未だ顔を赤くしていたら、菊池先輩が言った。
「…ほんとは俺、友希から言われてここに来たの」
「え、」
「茉友ちゃんはきっと今頃泣いてるから、お前が慰めてやれって」
「!」
菊池先輩はそこまで言うと、あたしとの距離を縮めてきて…
「でももう…寂しくないから、」
「!!」
囁くようにそう言って、ふんわりあたしを抱きしめた。
だけど、あたしはそんな菊池先輩の肩をぐっと押し返す。
「…茉友ちゃん?」
そして、あたしを寂しそうに見つめる菊池先輩に、思い切って言った。
「…菊池先輩は、どうしてあたしに優しくしてくださるんですか?」
「え、」
「今みたいに、平気で抱きしめたり…き、キス…とかしてきたり…」
「…」
「友達だからなんですか?それとも…」
“あたしが菊池先輩のターゲットだからですか?”
そう言葉を続けようとした瞬間…