へたれ王子
「違うよ」
それを菊池先輩に遮られた。
「…え」
じゃあ、ターゲットだからなの?
そう思っていると、菊池先輩があたしの目を真っ直ぐに見て言う。
「茉友ちゃんのことが大切だから」
「!」
「だから俺、茉友ちゃんのことは“ただの友達”とは思ってないし、むしろそういうふうには思いたくない」
菊池先輩は優しい表情でそう言うけど、あたしとしては言っている言葉の意味がイマイチよくわからない。
「…どういう意味ですか?」
思い切ってそう聞いてみたら、菊池先輩は今度は真剣な表情で言葉を続けた。
「俺ね、
茉友ちゃんのことが好きだよ」
「!!」
え…
すき…?
「…っていうかきっと、友希よりも俺の方が、茉友ちゃんのことを“好き”って思ってるよ。だから…凄く大事だし、ずっと俺の傍にいてほしい」
「!」
菊池先輩はそう言うと、戸惑うあたしを正面からぎゅっと強く抱きしめた。