へたれ王子
そしてあたしが完全に言う言葉を失っていると、菊池先輩があたしの耳元で言う。
「…好きだよ、茉友ちゃん。ずっと、友希から奪いたくてしかたなかった」
「!!」
菊池先輩はそう言うと、さっきより強くあたしを抱きしめた。
そんな菊池先輩に、あたしの心臓は今にも爆発してしまいそうで、しかも何だか顔中も熱いしクラクラする。
…ターゲット?これもターゲットだからなのかな?
一瞬そう思って疑ったけど、菊池先輩が強く強くあたしを抱きしめてくるから、その力からすればやっぱり「ターゲット」とは思えない。
でも、菊池先輩があたしなんかを好きになるって、そんなことがあり得るの!?
あたしがそう思って独り慌てていると、そのうち菊池先輩があたしを抱きしめている腕を離した。
そして何を言われるのかと思っていたら、菊池先輩があたしから視線をちょっと外して言う。
「…今は、茉友ちゃんは友希と別れたばっかだから無理だろうけど」
「…」
「俺はずっと茉友ちゃんの返事待ってるから」
「…へ、返事…?」
「俺と付き合ってくれるのかどうか、っていう返事」
「!!」
菊池先輩はそこまで言うと、どこか頬を赤く染めて…
「じゃあ、俺帰るから」
そう言って、あたしから体を離すとすぐに教室を後にした。
…高校二年になったばかりの春。
あたしは、人生で初めて“告白”というのをされたみたいです───────…。