へたれ王子
…怒っちゃうかな、菊池くん。
そう思ったけど、俺はその言葉に頷いた。
「そうだよ」
「!」
「“疲れたから”別れた」
俺がそう言ったら、菊池君は「…何だそれ」とため息を吐く。
何だそれって、だってそうじゃん。
俺は茉友ちゃん見てると辛いんだよ。
だからこんな想い、もう二度としたくない。
俺はそう思うと、顔を掛布団で覆って言った。
「…今頃茉友ちゃん泣いてるから、菊池君が慰めてやりなよ」
「!」
「今それが出来るのは、きっと菊池君しかいないから」
俺がそう言って布団越しに菊池君に背を向けると、菊池君は
「…そんなこと言われたら、そのまま俺が茉友ちゃん奪っちゃうよ」
真剣な声で遠慮なくそう言う。
でも、構わない。俺は恋なんてもうヤダ。
いっそのこと俺は茉友ちゃんに嫌われてしまえばいい。
そう思って、俺はそれをすぐに了承した。
「いいよ、奪っても。菊池君の好きにしたらいい」
俺がそう言えば、菊池君はその後何も言わずに保健室を後にした。
…これでいいんだ。
もう後悔はない。
俺はそう思うと、そっと目を閉じた…。