へたれ王子
「え、」
「だって、なんか、そんな感じしますし…あたしと違って、」
「…」
あたしはそう言うと、まだ菊池先輩を見れずに前だけを向く。
…どうしよう。今の言葉、嫌味になっちゃうのかな。
そう思ってドキドキしていたら、菊池先輩が言った。
「…まぁ、否定は出来ないけど」
「!」
「でも、今日のデートは俺にとって一番特別だから」
「え、」
「だって相手は茉友ちゃんだし、」
菊池先輩ははっきりそう言うと、あたしに向かって悪戯に笑って見せる。
その言葉にあたしはまたドキッとさせられる。
…やっぱり慣れてるんだ。
そう思うと、ちょっとだけ寂しく思う自分がいた。
それから二人で改札を抜けて、電車に乗って遊園地に向かった。
数十分くらい電車に揺られてようやくそこに到着すると、そこには家族連れや友達同士で来ているほかに、もちろんカップルもいて…。
腕を組んだりしているから、見ているこっちが思わず恥ずかしくなってしまう。
あたしがその様子に圧倒されていたら、二人分の受付を済ませてきてくれた菊池先輩があたしに言った。
「さ、茉友ちゃん何に乗る?」
そう言って、また何気なく手を握って園内の奥へと進んでいく。
「ジェットコースターにしよっか」
菊池先輩はそう言うけど、あたしはジェットコースターなんて絶対に乗れない。