へたれ王子
「ま、ままま待ってください!」
「え、どしたの?」
あたしは菊池先輩の腕を掴むと、言った。
「あたし、ジェットコースターだめなんです!」
「え、」
あたしはそう言うと、「だから、絶対嫌!」という意味を込めて菊池先輩を必死に引き留める。
すると菊池先輩は「あ、そうなんだ」とあたしに言った。
「ごめんね。じゃあ他のにしよっか」
「…はい、」
菊池先輩はそう言うと、あたしを連れて別の乗り物へと向かう。
「どうする?何乗りたい?」
「えっと…で、ではコーヒーカップとか…で」
「うん、じゃあそれにしよ、」
「……」
その菊池先輩の言葉にあたしが頷いたのを見ると、先輩はそこに向かった。
でもあたしはちょっと気分が浮かないまま、黙って菊池先輩の後ろについて行く。
…こんなんで平気なのかな。
だってあたしはさっきから緊張してまともに話せてない上に、菊池先輩を困らせてばっかで凄く気を遣わせてしまっている。
菊池先輩は優しいからニコニコしてくれているけど、ちゃんと「楽しい」って思ってくれているのかな…。
そう考えてぼーっとしちゃってたら、ふいに菊池先輩があたしの顔を心配そうに覗き込んできて、言った。
「…茉友ちゃん?どうしたの?」
「!!」
「もしかして、遊園地…楽しくない?」
そう聞いてくる菊池先輩の顔がまた至近距離にあって、慌てたあたしはバッと視線を逸らして「大丈夫です」と答える。
「た、楽しいです!とても、」
「…そう、」