へたれ王子
それからは二人でコーヒーカップに乗って、
お化け屋敷に入ってビビりまくって、
(途中で先輩とはぐれちゃったからそれが一番ビビった)
メリーゴーランドで一つの馬に二人で乗って、凄く照れてしまった。
そして、そうしているうちに時間はあっという間に過ぎて、その時に菊池先輩が言った。
「茉友ちゃん、観覧車乗ろ、」
「!」
菊池先輩はそう言って、あたしを連れてそこへ向かおうとする。
でも…もう無理だ。
今まではそれなりに我慢してきたけど、あんな狭い空間の中で、菊池先輩と二人きりっていうのは、いくらなんでもあたしの心臓がもたない。
ただでさえあのメリーゴーランドの時近すぎてドキドキしまくったのに。
あたしはそう思うと、菊池先輩に言った。
「いえ、先輩、あれはちょっと…」
「え、何で?高いトコ怖い?」
「そういうわけではありませんけど…」
あたしがそう言うと、菊池先輩は「じゃあいいじゃん」ってあたしの手を握る。
「!!」
だけど、その手にあたしは物凄くドキッとしてしまって…
「やっ…」
「!」
思わず、菊池先輩の手を払いのけてしまった。
あ…マズイ!
でもそう思った時にはもう遅くて、あたしがそう言ってしまったあと菊池先輩はちょっと俯いて「ごめん」と呟く。
そうじゃないのに……そうじゃないのに何かうまく出来ない。
この空気をなんとかしてあたしが変えないといけないのに、そんな余裕もないあたしはいたたまれなくなって、
「ごめんなさい!」
そう言って、走ってその場を後にした。