へたれ王子
その間に、あたしの目からはぼろぼろと涙がこぼれてくる。
涙を拭いながらなんとか人混みをかき分けて、遊園地から出ようとした、
…─────────その時。
「待って、茉友ちゃん!」
「!!」
あたしを追いかけてきたらしい菊池先輩に、腕を掴まれた。
そんな菊池先輩にあたしがびっくりしていると、先輩がどこか切ない表情で言う。
「俺、知らないうちに茉友ちゃんに何かした?それなら謝るからさ、」
「…」
「お願いだから、まだ一緒にいて」
菊池先輩はそう言うと、真っ直ぐにあたしを見つめてくる。
その間も、あたしの心臓はバクバクうるさい。
菊池先輩を直視できない…。
あたしはそう思いながらも、勇気を出して菊池先輩に言った。
「…あたし、ダメなんです」
「え、」
「菊池先輩と二人だと変に緊張しちゃうというか…き、キスの時とか告白の時を思い出しちゃって、うまく出来ないんです」
「…」
「なので、決して菊池先輩が悪いわけじゃありません!あたしがいけないんです。いちいち意識してしまって、喋れなくなってしまうといいますか…」
あたしはそこまで言うと、未だ菊池先輩を見れずにさらに俯く。
…引かれちゃったかな。変に思われちゃったかな。
あたしがそう思っていると、菊池先輩があたしの腕を手から離して言った。
「…なんだ、そんなこと、」
「え、」
そんなこと?