へたれ王子
だって、菊池先輩となら大丈夫なような気がする。
菊池先輩のことをもっと知りたい、
あたしがそう思って頷いたら、先輩がふいにぎゅっとあたしを抱き寄せてきた。
「!」
その行動にビックリしてドキドキしていたら、菊池先輩があたしの耳元で言った。
「ヤバイ、超嬉しいっ…」
「!」
「絶対大切にするからね、茉友ちゃん」
菊池先輩はそう言うと、あたしを抱きしめている腕の力を強くする。
今までなら凄く緊張して心臓がバクバクうるさかったのに、でも今は違う。
今は安心感があって、不思議と凄く落ち着く…。
そう思ってしばらくそのままでいたら、ふいに菊池先輩が抱きしめている身体を離して…
「…茉友ちゃん…」
「!」
甘い雰囲気のなか、顔を近づけてきた。
ドクン ドクン
二回目のキスを前に、鼓動が速くなる。
でもだからといって全然嫌な気はしなくて、気が付けばあたしはまた…
菊池先輩とキスをしていた。
柔らかいその感触にあたしがドキドキしまくっていたら、先輩はその口を離してまたあたしを抱きしめてくれる。
……幸せだった。この頃は。
「ずっと二人でいようね」
「はいっ、」
これから先、とんでもない地獄があたし達を襲うことになるとは知らずに────────…。