へたれ王子

その言葉にあたしが不安がっていたら、菊池先輩が言葉を続けて言う。



「確かに俺、その噂通り結構女の子達と遊んでた」

「！」

「友希にフラれた女の子達を抱きまくって、自分のモノにしていろんなコと同時に付き合って…。
本気で好きになったコって、正直いなかった」



菊池先輩はそう言うと、あたしの耳元で「不安にさせてごめんね」と呟く。

その言葉にあたしが物凄くショックを受けていると、先輩は「でも、」ってあたしをより強く抱きしめて言った。



「茉友は、違うから」

「え…」

「俺、茉友のことは本気で好きだよ。これは信じて？」



その言葉に、あたしの心が少しだけ安心感を覚える。

でも、出来れば信じたくなかったその過去を簡単に受け止めることは出きなくて、なかなか返事が出来ない。


…本当？

本当に、そのあたしへの想い、信じてもいいんですか？


なんて、あたしがいつまでもそう思っていたら、ふいに菊池先輩が抱きしめているあたしの体をちょっと離して不安げに聞いていた。



「…やっぱ、信じられない？」



そう言って、首を傾げてあたしを見る。


いや、菊池先輩は今まであたしに凄く優しかったし、親切にしてくれたことは覚えてる。

それに、感謝もしてるし「菊池先輩は良い人」ってのもわかってるから、信じたい。


でも何か嫌だ。

何かが…嫌。


あたしはそう思うと、菊池先輩から視線を逸らしてうつむいた。


…何か心の奥がモヤモヤする。

何なんだろう、これ。



そう思っていたら…、