へたれ王子



「茉友」



ふいに菊池先輩に名前を呼ばれた。

その声にあたしがまた顔を上げると…



「…っ!!」



突如菊池先輩の顔が近づいてきて、あたしは先輩にキスされた。

菊池先輩とは、三回目のキス。

その瞬間、心臓が一つ大きな音を立てた。

でもそのキスもなんだか凄く慣れていて、嫌になる。


菊池先輩はきっと、“女のコ”を知り尽くしているんだ。


あたしはそう思うと、咄嗟に菊池先輩の肩を押し返して、口を離した。



「…茉友?」

「…っ、」



その時、菊池先輩のそんな寂しそうな声が聞こえてくる。

あたしの腕がガクガクと震える。


…信じたいけど、信じられるわけない。

色んな女の子達と遊びまくっている菊池先輩が、よりによってこんな地味で目立たないあたしを本気で好きになるなんて…。



あたしがそう思って、「ごめんなさい」と口を開きかけた、その瞬間…



「!?」



突然、菊池先輩があたしの肩を掴んで近くの壁にあたしを押しやった。

その行動にビックリしていると、先輩があたしの眼鏡を外して、菊池先輩に深くキスをされる。



「んんっ…!?」



ただの、いつもの優しいキスじゃない。

今までに経験したことのないキスにビックリして菊池先輩の肩を押し返すけど、ビクともしない。

むしろ先輩のキスはだんだん激しくなっていって、息が出来なくなる。


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