へたれ王子



酸素が欲しくて口を開けると、その中に柔らかいものが入ってきた。

なかなか終わらないキスに抵抗しても、その両手を菊池先輩に掴まれて壁に押しやられる。

そんな突然の行為に、怖くていつのまにか涙があふれる。


…いつもの菊池先輩じゃない。


しばらくそんなキスを繰り返して、やっと口が離れた。

息をきらして先輩を見ると、その時物凄い至近距離で目が合う。

その視線にドキッとしてあたしが逃げるように横を向くと、菊池先輩が呟くように言った。



「…ごめん、止まんない」

「え、」



止まんない?


菊池先輩の言葉に、あたしは?を浮かべてまた先輩を見遣る。

すると菊池先輩は突如あたしの制服に手をかけて、着ているブレザーのボタンを外していった。

その行動に、さすがに真っ青になって慌てて菊池先輩の手を止める。

でも先輩の手は止まらない。



「ちょっ…せんぱっ…」



ここまでくるとさすがのあたしも今何をされようとしているのかが、嫌でもわかる。

いつだったかに体育館裏倉庫に菊池先輩に襲われそうになった時の、あの記憶が蘇ってきて物凄い嫌な予感がした。

そしてブレザーのボタンを全て外されると、左胸に先輩の手が優しく添えられ…、



「いやっ…!!」

「!」



あたしはその手にビックリして、菊池先輩の手を振り払うと走って屋上を後にした。



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