へたれ王子



星河先輩 side


あぁ、怠い。帰りてー。


そんなことを思いながら、保健室に向かう。

その途中、同学年の女子に話しかけられて囲まれそうになったけど、急いでいるフリをして適当に交わした。


ふー、危ねぇ。

一回捕まると、なかなか離してくれないんだよな。

頼むから、保健室に行かせてくれ。

(別に体調が悪いわけじゃないけど)


そんなことを思いながら、俺が階段を下りようと曲がり角を曲がると、その直後に前から一人の女子生徒が走って来た。



「!」



一瞬誰かわからなかったけど、肩がぶつかって「すみません!」ってそのコが謝ってきた声を聴いた時、

俺はその声だけで誰なのかがすぐにわかった。



…茉友ちゃんだ。



顔はよく見えなかったけど、茉友ちゃんは相手が俺だと気づいていないのか、軽く頭を下げるとすぐにその場を後にしようとする。



でも…、



「待って!」

「!?」



俺は珍しく、茉友ちゃんの腕を掴んで彼女を引き留めた。



「待って…茉友ちゃん、」

「!」



俺がそう言うと、茉友ちゃんは未だ俺を見ようとしていないまま、ふと立ち止まる。

そして相手が俺だとやっと気づくと、茉友ちゃんは少しびっくりしたような声で言った。



「ほ、星河先輩…?」


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