へたれ王子



そう言って、ますます暗い顔をしてしまう。


…って、あぁ何てことを聞いちゃったんだ俺は!

茉友ちゃんにこんな顔をさせるつもりじゃなかったのに…。


だけど、茉友ちゃんと菊池君が別れてしまったっていう噂が真実だってことはわかった。


わかっちゃったから、俺は茉友ちゃんに言った。



「…えっと、茉友ちゃん、」

「はい?」

「今更こんなことを言うのも何だけど…田中先生には、気を付けたほうがいい。

っていうか、あの先生とは関わらないで」

「え、」

「田中先生はきっと、茉友ちゃんのことを邪魔してる」



俺はそう言うと、真剣な眼差しで茉友ちゃんを見つめる。

でも一方、そんな言葉を聞いた茉友ちゃんは戸惑うように下を向いた。



「え、ほ、星河先輩…それってどういう…?

言ってる意味がよくわからないです…」


「っ…だから、俺気づいちゃったんだよ!田中先生は、茉友ちゃんと菊池君が別れることを望んでたの!

今菊池君と別れた茉友ちゃんは、田中先生の思惑通りになちゃってんだよ!」


「!!」



俺はそう言って、思わず茉友ちゃんの両肩を掴んだ。


そりゃあ俺だって茉友ちゃんと菊池君がくっつくのは良い気がしないし、むしろ悔しいけど…。

それよりも、茉友ちゃんの笑顔を見れなくなることの方が、もっと嫌だ。



田中先生にそれを邪魔されるくらいなら俺が助けてやりたくてそう言うと、

茉友ちゃんは俺を見ずに言った。



「…ごめんなさい、先輩」

「?」

「あたし、頭の中がぐちゃぐちゃで…もうこれ以上どうしていいかわかんないですっ…」






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