へたれ王子



でも…


そのあとの授業もなんだかそんなことが多くて、

あたしは結局なんだか今日は真面目に授業に取り組めなかった。



それに、クラスメイトの噂によると、菊池先輩は昨日から風邪で学校を欠席しているらしい。

そのことにもなんとなく気にかけていたら、あっという間に時間が経ってようやく放課後になった。



…さて、帰ろう。



そう思って、独り席を立つ。

友達がいないあたしは、昨日のようにまっすぐ家に帰ろうとした。




…しかし、その時。




「夏野さん、」




ふいに、見慣れない女子生徒に苗字を呼ばれた。




「…はい?」



まさか誰かに声を掛けられると思ってもみなかったあたしは、思わず少しびっくりしてしまう。

…誰だろう。一年生っぽい。

あたしを呼んだその子を見てそう思っていると、その子はあたしを見つめながら言った。



「すみません、少しだけ時間もらっていいですか?」

「え、いいですけど…?」

「じゃあこっち、ついて来てください」

「??」



そのコはそう言うと、あたしに手招きをして教室を後にした。



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