へたれ王子



だけど、全く面識がないコに突然呼ばれると、なんとなく疑ってしまう。


…何の用?っていうか、何処に連れて行く気?



「えっと…あたしに何の用でしょうか?」



疑問だらけでそう聞くと、そのコはなんとも爽やかな笑顔で、



「夏野さんに見せたいものがあるんです!

…あ、ちなみに星河先輩からの頼み事なので安心してください」



って、そう言った。


…え、星河先輩の…?


それを聞いて少し驚いていたら、そのコがようやく到着したらしい場所のドアを開けた。


そこは、いつかの日も来た体育館裏倉庫。

ここには嫌な思い出があるんだよなぁ(菊池先輩絡みで)。

そう思ってなかなか入れずにいたら、そのコがニッコリ笑って言った。



「大丈夫ですよ、そんなに怯えなくたって」

「いや、怯えてるわけじゃ…」

「とにかく、本当に大丈夫ですから入ってください、」

「!」



そのコはあたしにそう言うと、突如あたしの腕を掴んで倉庫の中に入らせる。

薄暗いそこで不安を覚えていたら、あたしをここに連れてきたそのコが、次の瞬間ガチャリ、と中から鍵をかけた。



「!!…何をっ…!?」



その行動に、あたしはビックリしてすぐに入り口に駆け寄る。



…────でも。




「待ってたわ、夏野さん」

「!」



突如そんなあたしを引き留めるように、倉庫の奥で田中先生の声がした。



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