へたれ王子
そう思いながら保健室を出ると、俺は教室まで鞄を取りに行った。
その途中、何人かの女子達に「一緒に帰ろう」と言われたけれど、
茉友ちゃん以外のコとはまだあまり一緒に帰る気にはなれない。
…未練タラタラじゃん、俺。
そう思ってため息を吐くと、ようやく到着したそこで鞄を持って、教室を出る。
そして、「さぁ帰ろう」と思って生徒玄関に向かっていると…
その時、同じクラスの男子生徒に話しかけられた。
…菊池君以外の男から話しかけられるのは、新鮮だな。
「あ、星河」
「うん?」
「田中先生どこにいるか知らねぇ?」
そう言って、俺を見遣る。
でも田中先生が何処にいるかなんて全く知らない俺は、首を横に振って言った。
「んーん、知らない」
「そっか、さんきゅー」
そいつは俺の言葉にそう相槌を打つと、その場を後にした。
そんな姿を少しだけ見送って、俺は階段を下りて玄関に続く廊下を歩く。
そしてようやく到着した生徒玄関で靴を履き替えていると、俺はどうしても茉友ちゃんのことが気になって、
遠くの方にある茉友ちゃんのロッカーに目を向けた。
…あのコはまだ、いるだろうか…。