へたれ王子



そう思って、茉友ちゃんのロッカーに一歩一歩近づいていく。

帰ったかどうかだけ何故か凄く気になった俺は、その扉を開けようとゆっくりそこに手を伸ばした。


でも…



「……」



…いいのかな。

よくよく考えたら、勝手に他のコのロッカーを開けちゃうなんて。

もしかして俺今、いけないことしようとしてる感じ?


俺はそう思うと、またその手を引いて下に下ろす。


…いや、でもなぁ…。


しばらく心の中で葛藤を繰り返していたら、その時また他の女子生徒に声をかけられた。



「あ、星河先輩!」

「!」

「…どうかしたんですか?2年のロッカーに来たりして…」



そのコは不思議そうにそう聞くと、少しびっくりする俺の顔を覗きこむ。

ヤベッ…不審に思われる、


そう思ってなんとか誤魔化そうと口を開いたら、そのコがそれを遮るように俺に言った。



「夏野さんなら、一年のコに連れられて、外に行くのを見ましたよ」

「!!…え、」

「あれ、星河先輩、夏野さんに用事があるんじゃないんですか?

だってそれ、夏野さんのロッカー……」



そのコはそう言って、茉友ちゃんのロッカーに指をさす。

でも凄く気になる情報を得た俺は、思わずそのコの両肩を掴んで言った。



「っ…何処!?茉友ちゃん、何処に連れて行かれた!?」

「え?えっと―――…」


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