へたれ王子



目障り…?


その言葉にあたしが戸惑っていると、田中先生はあたしに一歩一歩近づきながら話を続ける。



「だって夏野さん、地味だし。特に可愛いわけでもないし、運動も全然ダメだし、勉強しか取り柄がないじゃない」

「!」

「それなのに…何なの?友達もろくにいないくせに、星河君や菊池君っていう校内のアイドル的二人に気に入られちゃってさ。

何でアンタみたいな超地味子がそんなふうになるわけ?

教師のあたしから見ても、いっつもイライラしてんだよね」



田中先生は好き勝手にそう言うと、ようやくあたしの目の前まで来た。

…でも、そんなことを突然言われてもわけがわからないし、とにかく怖い。

いつもと全く違う田中先生に怯えながらも、あたしは震える声で田中先生に言った。



「で、でも…田中先生は、あたしをいつも心配してくれて…」



そう言って田中先生に恐る恐る目を遣ると、田中先生は呆れるように言った。



「…何それ。あんなの信じてたわけ?」

「!」

「嘘に決まってるじゃん。あたしはただ、アンタと菊池君が別れればいいなぁって思ってただけ」

「!?」

「で、努力の結果アンタと菊池君が別れてくれて大成功だし、これでアンタもまた独りになるって喜んでたのに…」



そう言うと、田中先生はあたしから視線を外して重たいため息を吐く。

そのため息にますますビビっていたら、田中先生が畳み掛けるように言った。



「……消してやるわ、今すぐ。アンタなんか」

「!」

「もう一生あの二人に近づけないようにしてあげるから」



そう言って、あたしを真っ直ぐに見つめて不気味に笑った。





…―――その時。



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