へたれ王子



その田中先生の問いかけに、あたしは思わず目を見開いて星河先輩を見る。


すると…



「そうですよ。当たり前じゃないですか」



星河先輩はそう言って、あたしをかばうように目の前に立ってくれた。


…星河先輩…。


でもその言葉に、田中先生は顔をしかめて言う。



「どうして?星河くんは、夏野さんと別れたはずでしょう?

だったら今更助けに来ることはないじゃない」



田中先生は少し強い口調でそう言うと、自身の腕を組んで星河先輩を見上げた。

その場の雰囲気にあたしが内心怯えていると、星河先輩が負けじと田中先生に言う。



「そんなこと田中先生には関係ないですよ」

「関係なくても、非常識だと思わない?自分から振ったくせに、今更思わせぶりな態度で助けに来るなんてさ」

「!」

「どうかしてるわ、星河くん」



そう言って、余裕な笑みを浮かべる田中先生。

そんな田中先生の言葉にあたしが俯くと、星河先輩が言った。



「…確かに、非常識だとは思います。自分でも」

「?」

「だけど俺は、非常識でもいいです。それでも茉友ちゃんのことが好きだから、」

「!」

「自分から振っておいて、こんなことを言うのはオカシイのはわかってます。

でも俺はずっと逃げてたんです。自分の気持ちからずっと逃げて、

茉友ちゃんの気持ちを見てあげようとしていなかった。


だから、助けに来たんです。


今の俺にはこれくらいしか出来ませんから」



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