へたれ王子
星河先輩がそこまで言うと、田中先生は、
「…何で夏野さんばっかり」
そう呟いて、近くの平均台に腰を下ろした。
その目があまりにも切なく感じたあたしは、思わず田中先生に問いかける。
「あの、どうして田中先生はこんなことを…?」
星河先輩の肩から顔を出してそう聞くと、
田中先生は一瞬あたしにチラリと目を遣ったあと、正直に話し始めた。
どうやら田中先生は高校生の頃あたしと同じで地味子だったらしく、
周りから物凄くバカにされて学校生活を送っていたらしい。
そして教師になって同じく地味なあたしを見て懐かしく思っていたけど、
あたしがたまたま星河先輩と恋人同士になれたのを見て悔しさを感じたんだとか。
「…先生、茉友ちゃんのことがお気に入りって言ってたじゃないですか」
星河先輩が怒ったような口調でそう言うと、
田中先生は、「あんなの嘘に決まってるでしょ」と言った。
「気に入ってるって言ったら、夏野さんに何をしても疑われることがなくなるし」
そう言って、今度は呟くようにあたしに言う。
「……ごめんなさい」
そして意外とすんなりその場がおさまってくれて、そんな田中先生を見た星河先輩が安堵のため息を吐いた。
だけど…
「あの、田中先生」
あたしはもう一つ気になることがあって、田中先生にまた問いかけた。