へたれ王子



なんだか矛盾している言葉にあたしは混乱しながらも、ドア越に言う。



「え、えっと…確か、風邪引いてるんじゃ…」



あたしがそう言うと、その人はあっけらかんとして答えた。



「うん、そうだけど。それがどうかした?」

「!」

「大丈夫よ、コンビニ行くくらい大したことないから」



そう言って、おかしそうに笑う。


…い、いやいや…。

でもそれ、学校の誰かに見つかったら「ずる休み」とか思われますよ。


そう思っていると…



「ま、茉友…?」


「!!」



後ろから、ふいに菊池先輩の声が聞こえてきた。

その声にあたしが振り返ると、そこにはマスクをして少しびっくりしているような菊池先輩が立っていて…。



「…き、菊池先輩…」



あたしがそう呟くと、菊池先輩は玄関のドアに近づきながら言った。



「どうしたの?ここまで来て」

「え、や、あの…」

「?」

「…き、菊池先輩に、謝りたいことがあって…」



そう言って、菊池先輩を見れずに俯く。

すると菊池先輩はドアを開けて、「まぁ入りなよ」って言った。



…しかし。



「おかえり、大将クン」




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