へたれ王子
「!!」
そこには、ついさっきまであたしと話していた女の人の姿が。
…まだ若そう。
20歳くらい?
そう思っていたら、菊池先輩が顔をひきつらせて呟いた。
「…ゆ、結羽…」
ゆう…?
その名前にあたしが首を傾げていたら、その「結羽」と呼ばれる人が言った。
「遅かったねぇ大将クン。お姉さまはもう待ちくたびれちゃった」
「そ、そう…ごめん、」
「で、ちゃんと買ってきたんでしょうね?新商品のコンビニスイーツ」
そう言って、菊池先輩に向かって手のひらを差し出す。
すると菊池先輩は、さっきから手に下げていたコンビニの袋を結羽さんに渡した。
「ありがと~、さすがあたしの弟!」
結羽さんは上機嫌でそう言うと、すぐに廊下の奥へと歩いて行った。
…弟…。
菊池先輩、お姉さんがいたんだ。初耳。
そう思いながらなんとなく結羽さんの背中を眺めていたら、菊池先輩があたしの方を向いて言う。
「…ごめんね。ほら、上がりなよ」
「あ、はい。お邪魔します」
あたしは菊池先輩の言葉に家にお邪魔すると、菊池先輩の後に続いて部屋に向かった。