へたれ王子
「だったら、動物園とか!」
「いや、そこもちょっと…」
「え、ダメですか?…あ、水族館とかはっ…」
「それも却下」
「…」
とりあえず思いつく場所を言ってみるけど、星河先輩は全て却下してしまう。
…っていうか…
「先輩、話が違うじゃないですか!」
何処でも付き合うって言ったのに!
そう思って納得のいかない気持ちでそう言ったら、星河先輩は、
「だって、疲れるじゃん」
そう言って、あたしの顔を見遣った。
「……」
…最悪だ。
菊池先輩は、凄く紳士的だったのに。
星河先輩はそんなそぶりが全くない。
星河先輩のカッコ良さは、今日倉庫にあたしを助けにきてくれたあの時が一番のピークだったな…。
…でも、
「そんな顔しないで、茉友ちゃん!
俺、これでも茉友ちゃんのこと…す、すすす、好き、だからさ」
「!」
「今度こそ…ずっと一緒にいようね」
彼はずるいです。
そう言って、必死に愛の言葉を囁いてくれるのですから。
あたしは星河先輩の言葉に頷くと、笑顔で彼の顔を見上げた。
『へたれ王子』-完-