へたれ王子
だけど、星河先輩は来ない。
今頃どこにいるのかもわからない。
…先に帰っちゃったりしてないよね…?
そう思いながらビクビクしていると、ネクタイを外した菊池先輩の顔があたしに近づいてきた。
「!!せ、先輩、やめっ…」
「ウルサイ、」
「!!」
思い切って菊池先輩の肩を押し返してみるけど、先輩は全く動かなくてちゃんと抵抗になっていない。
ってか、超コワイ!
その間にも、あたしの脳裏には星河先輩の顔ばかりが浮かんで、気が付けばあたしは…
「…っ…」
「…茉友、ちゃん…?」
菊池先輩の前で、怖くて泣いてしまっていた。
「…先輩、嫌です。離れてくださいっ…」
そして涙声でそう言って、また菊池先輩の肩を押し返す。
「…、」
すると、今度は意外にも菊池先輩はちゃんとあたしから離れてくれた。
「…ごめん、」
そう言って、外したネクタイを持ってまた平均台に座る。