へたれ王子
*彼と私の恋の距離感*
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翌日。
星河先輩とのデート、二日前。
昼休みにいつものように次の授業の予習をしていたら、
一人の女子が教室に戻ってくるなり、言った。
「ねぇ、みんな聞いて!」
「?」
「ヤバイもの目撃した!」
そう言って、仲間達の元に行く。
そんな女子の言葉にあたしはいつもなら特に反応しないけど、
「ヤバイもの」と聞いて今回は聞き耳を立てた。
何、ヤバイものって…。
そう思っていると、その女子の仲間達が言う。
「え~、でもさ、あんたの言う“ヤバイもの”っていつもたいしたことないからなぁ」
「そうそう。どーせまた“でっかい虫がいた!”とかなんとか言うんでしょ?」
仲間たちはそう言って笑うけど、その女子は「違うよ!」と真剣に首を横に振って言った。
「そこの女子トイレで、佐伯さんがイジメられてんの!」
そう言って、まるで「助けに行こうよ!」とでも言いたげに、その女子は仲間たちの腕を引っ張る。
でも…