ぼくはネコ
お腹がいっぱいになり、幸せな気分のまま顔をあげると、ニンゲンはもういなくなっていた。

雲が低く感じられる空になり、灰色が増している。

今日もだ。

昨日もだった。

この空になると、すぐに雨が降ってくる。

ニンゲンが慌ただしく走り始める。

昨日はビショビショに濡れたけど、昨日濡れながらたどり着いた場所がある。

今日は濡れる前に僕も走らなきゃ。

大きな木の根元だ。

ここなら、少し濡れるだけですむ。

僕に美味しいものをくれたニンゲンも、ここに来たら少し濡れるだけですむのに。


にゃー


呼んでも誰も来なかった。
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