ぼくはネコ
「いないじゃん。この前話してたネコ」


『ネコ』という意味はわかった。

僕の名前だ。

てことは、僕を呼んでるの?

さっきよりもう少しだけ頑張って、草から顔を出してみる。

いつもと違う服を着ている、銀色のニンゲンが見えた。


「いるよ。さっき鳴き声が聞こえたもん」

「えー、探したけどいなかったよ?」


やっぱり僕のこと?

僕を探してくれているのなら、この道を渡れば撫でてもらえるのかな?

美味しいものもくれるかな?


出て行ってみようか。

初めて、この大きな道路を渡ってみようか。


迷っていた僕の前を、1台のクルマが猛スピードで通過して、僕はまた草むらに慌てて身を隠す。
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