ぼくはネコ
この道さえ渡れば、銀色のニンゲンに会えるのに。

そう思うと、隠れたままでも僕の尻尾は勝手にピョコピョコ跳ねた。


僕がもっともっと小さかった頃、怖かったけど頑張って何かの入れ物から外に出た気がする。


縦になってるとこまでぶつかったら、体を伸ばして、後ろ足でグイッと立ち上がったら、前の手を端っこに引っかけて。

そうやってよじ登った入れ物。


あの時みたいに頑張って、この草むらから出たら。

道路を渡ったら。


銀色のニンゲンが撫でてくれるかもしれない。

少なくとも、僕をいじめるニンゲンとは違う気がした。


「もう何日も鳴いてるの。どうしたらいいかわからないよ」


だって、聞こえる声が温かいから。
< 36 / 46 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop