ぼくはネコ
鳴いて鳴いて、声が枯れて。
もう、口を開けても声が出なくなったけど、震えだけは止まらない。

ただ、声が出なくなったことでわかった。

なにか音が止まったり鳴ったりする。

お母さんが言ってた言葉を思い出した。


『これは、クルマ。この音が聞こえたら、危ないから逃げなさい』


その音だ。

だけど、お母さん。
逃げ方がわからない。


そしてお母さんが『ニンゲン』と呼んでいた声。


「この辺でいいんじゃない?」

「そうだな」


『オトコ』と『オンナ』の声。

クルマの音が止まり、僕がいる小さな部屋が揺れて、僕は何度も壁に体をぶつけた。
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